温もりを感じたい

黒の五色



ふと思う。
何故自分は忍になったのかと。

血に濡れて、悲鳴に耳を塞ぐこともできず、ただ殺す。
人の命を奪う。

…生き物は好きだ。
きらきらと生命力に溢れている小さな生き物たち。
愛しいと思う。大切だと思う。なのに命を奪う。

生きる為に。
だがこの手の意味は?

ふと怖くなる。
いつかこの手が赤く染まり、永遠に消えない色を肌に刻み込むのではないかと。だが同時に知っている。自分と同じ気持ちでいる仲間のことを。この苦しみを。悲しみを。…あの人も。

手を合わせるのは好きだ。
こんな自分を受け入れてくれると感じられるから。自分も同じですよと言ってくれているようで。

ほっとする。
安心する。

だから相手は愛しい。



「…イルカ先生。何一人でタソガレテイルんだってばよ」
「…ナルト難しい言葉知ってるなぁ」

額に青筋をたてて振り向けば、何故怒りの琴線に触れたのかわからぬナルトは怯えつつ首を傾げている。大方、よく意味もわからず教えられた言葉を使ったのだろう。その犯人はサクラ辺りかと視線を向ければ、苦笑いしている彼女と目が合った。

「イルカ先生。お仕事終わったんですか?」
「ああ。今日はもう終いさ!お前らもか?」

頷いたサクラとその隣にいるサスケに顔を向ければ、無口な少年ははいと答えた。そんな二人の傍に駆け寄ったナルトは、些細なことで喧嘩をしかけ、しかしサスケには無視され怒っている。

いいチームになったな。

心からそう思いながらふと一人足りないことを思い出したイルカは、ナルトの頭を容赦なく殴ったサクラへと質問すると。

「…一人でさっさと受付所に戻りました」
「そうだってばよ!疲れている俺達を放ってさ!」
「何かすごい楽しそうだったのがむかつくな」

三人の子供達の言葉を聞いて、ふぅんと頷いたイルカ。きっと約束でもあるのだろう、珍しいことだと思いながら、文句を言う子供達の姿がどこが寂しげに見えて。

「よし!じゃぁお前ら飯でも食いに行くか!」
「え!イルカ先生の奢り!?やったぁ!」
「驕ってやるけど、自重しろよ」
「ええ〜〜〜!」
「こらナルト!でもいいんですか?」
「ああ!気にするな!」
「…いつもすみません」
「出世払いを期待してるからな!」
「「うわ!せこっ!!」」

ナルトとサクラの言葉が重なり、サスケは苦笑する。そんな彼等と騒ぎながら、イルカは街へと向かった。


…その頃。

「ええ!イルカ先生帰ったんですか!?」

と、受付所で一人項垂れる某上忍の姿がいたとか、いないとか。