ぱぁんと最後の洗濯物を青空になびかせ、ご満悦に微笑む。部屋の掃除も終わったし、後は食事の用意だけ。普段は、簡単なものですましている分、今日ぐらいは手の込んだものでも食べようかと、財布を片手に家を出た。
平日の昼間は、有る意味夜より静かだと思う。大人は仕事の最中だし、子供は学校に行っているからだ。休みの日はひっきりなしに子供の声が聞こえる公園も、居るのは本当に小さな子供達を連れている母親達の社交場となっていた。子育ての愚痴だろうが、楽しそうに、或いは眉を寄せて話し合う彼女たちに背を向けて、目的の場所へと足を進める。
「お!珍しいね先生。今日は休みなのかい?」 「ああ。ようやくね」 「何時も急がしそうだからなぁ。今日ぐらいは家でごろごろかい?」 「そうしたいんだけど、急ぎの仕事があって、それを終わらせないといけないんだ。ま、量は少ないんだけど!それと、それくれる?」 「へい!毎度!!」
子供の頃から顔見知りの青年は、家業を継ぎ今ではりっぱな店の親父となっている。気安い間柄なので、自然と口も親しいものになり、互いの近情などを10分ほど話し込み、店を離れた。 野菜の袋を持ちながら、肉と魚を買い込みぶらぶらと家路に戻る。ただ買い物に出ただけなのに、気持ちが弾むから不思議でたまらない。だが、その一日も終わり頃になれば、何だか寂しくて。
ドンドン。 突然叩かれたドアを開ければ、金色の子供が飛びついてくる。
「イルカ先生〜なぁなぁ、ご飯終わったってばよ!?」 「ナルト?どうしたんだ?急に…」 「今日さ、任務でこれ貰ったんだってばよ!食後のデザートにどうかと思って持ってきたんだ!!」
得意そうに笑うナルトの手には、下の方がぷくりと円い洋なし。イルカの目から見ても美味しそうな色づきに、思わず目が微笑む。
「何得意そうに言ってるのよ!ナルト!貰ってすぐに食べようとしていた癖に!!」 「そ…そんなことないってばよサクラちゃん」
目をおどおどさせている所から、サクラの指摘は正しいのだろう。二人から目を離せば、サスケと目が合い彼は小さく頭を下げた。
「皆任務お疲れさん!どうだ?食べていかないか?」 「えっ!やったってばよ!!食べる食べる〜」
「えっと。いいんですか?」 「ああ。遠慮するなよ。サスケもな?」 「…はい」
それまで騒がしかった部屋が一気に五月蠅くなった。真っ先にイルカの部屋へ上がろうとしたナルトだが、あっと小さく叫び外へと飛び出すと、今まで姿を見せなかった人を引っ張ってくる。
「勿論カカシ先生も食べていくってばよ!!」
イルカの了承も取らず、そう言い張るナルトにカカシは困った顔で目を細めた。子供達はともかく自分までは…と思っているのだろう。今にも帰ると言いそうな彼に、イルカは微笑みかける。
「カカシ先生も良かったらどうぞ。大したものはありませんが」 「あ〜はあ。いいんですか?」
勿論と頷けば、ナルトが飛び上がって喜んだ。それまでの静けさが嘘のように騒がしくなった自分の部屋。だが、こっちの方がいいなぁと、イルカは微笑み続けていた。
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