特別な結継限界を持っているような、お偉い家柄ではないが、先祖代々忍の職業についていた。忍の命の儚さを最初から承知して、子を沢山生み、その中の一人は忍ではなく、ただ血を繋げる者として家を継ぐ。だから、両親は忍ではない。しかし叔父や叔母はすべてが忍になっていた。 当然のごとく自分にも8人もなる、兄や姉、弟がいてその中から家を継ぐ者が選ばれる筈だった。 その選択に自由はなく、親族会議のみで未来は決められる。それはすなわち、生き残る者と死ぬ者。私はその中で生き残る者に選ばれた。だが、それは家を継ぐ為ではなく…すぐに死ぬだろう者として。
生まれた時から体が弱く、毎日何かしらの原因で布団の中だった。兄姉達はみんな外を走り回っているのに、何故自分だけ。そう思う気持ちは止められず、優しい兄達を羨んでいた。だが、この忌々しい体は、兄たちにとって哀れと同時に羨ましいものでもあったらしい。
望んでいたわけでもない、血に濡れた忍の道を進まなくても良い、こんな私を。
彼らは心底羨んでいた。
それを知ったのは…一人の兄が任務で死んだとき。
忍に葬式はない。ただ、真夜中に兄姉達が彼を偲んで集まっていたそんな時。珍しくも体調が良く参加していた私に、兄の一人がぽつりと言った。
お前はそんな心配はないな。
家を継ぐと決まっている兄が姿を見せない訳がわかった。生きる道にいる兄と、忍の兄姉の中には見えない壁があったのだ。
それに気付いた瞬間、この体を言い訳にして、どちらの道も選んでいない自分が腹立たしくなった。
体が弱いから、忍の道に行けず。 体が弱いから、家も継げず。
中途半端な己の存在が、とても滑稽で…腹立たしかった。
だから決めた。私は忍の道を選ぶと。 体の弱さなど関係ない、そうしようと思う自分の気持ちにただ従った。 やがて私の体は周りが驚くほど丈夫になってくれた。まるで私の気持ちを理解してくれたように。そうなると開けた忍の道に、私は迷わず飛び込んだ。
「どうだ。暗部に行ってみるか」
火影の言葉に一、二もなく頷いた私。だけどその場所は暗部以上に厳しく優しいところだった。
強さだけでなく、心も学びなさい。 互いの信頼関係がないとやって行けない「黒の部隊」。いつも殺すことだけを考えていた私。もしただの暗部だったなら、私は殺戮するだけの人間になっていたに違いない。ここで覚えた心の自制心。それこそがより自分を高めるのだと、知った。
「てめぇツバキっ!!外に出ろっ!!」 「望むところよ!アンタが私に勝てるわけないでしょうがっ!!」 「いい加減にしろっ!二人ともっ!!!」
強さの違う三人が集まるところ騒動有り。そう言われても止められないのは…
互いを信じているからかもね。
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