「何を見ているんですか?」

とある休日、イルカの部屋で本を読んでいたカカシは肩越しから除いてきたイルカに見えるようにと、体をずらした。そこに描かれていたのは黒い筒。

「もしかして…銃ですか?」
「さすがイルカ先生。お詳しい」
「べたなお褒めの言葉は結構です」
「…つれないなぁ。最近こういうものが市場に出始めていると聞いて勉強しなければと思いまして」

イルカは絵の下に書かれている文字を読んで眉を潜めた。
弓や手裏剣のように遠くから撃つもの。殺傷能力が高く、訓練をしなくてもある程度は誰でも使える。

こんな危ないものがあるなんて。
そう思ったイルカは、ふと目の前の背中が一瞬遠くなったような気がして少しだけ震えた。

これがカカシに向けられたら、どうしよう。
どれだけの距離から狙えるのか知らないが、これがあればカカシが感じられないほどの遠くからでも狙えるのかもしれない。彼の戦闘能力を持つならば、きっと動物的勘でそれから逃れてくれるだろうが。
でも。

「…イルカ先生?」

珍しくもイルカが背中から抱きしめて来たことにカカシは驚いて、だけど自分に顔を見られないようにしている彼にちょっと呆れる。

全くこの人は。

一瞬で彼の考えていることがわかってしまった。きっと自分が狙われたならとか思っているのだろう。

「大丈夫ですよ、先生」
「…そんなのわかってます」
「はいはい」

頭を撫でてやると、ぐすりと聞こえた。
本当にこの人は。
呆れつつもちょっと嬉しかったカカシだった。

銃 (2006.12.15)