口説き文句




「イルカ先生好きです」
「…急になんですか、貴方は」
「突然言いたくなったんですよ、好きです」
「はぁ、ありがとうございます」
「好きです」
「…」
「好きです」
「…」
「好…」
「五月蠅いっ!!!」

ついにぶち切れたイルカは、隣でぶつぶつと呟くカカシを書類の束で殴った。それでなくとも、最近は忙殺状況でイライラしっぱなしだというのに、邪魔をするなら出て行けと睨み付ければ、カカシは黙った。
わかってくれたかと、ほっとしたが今度は視線が邪魔をする。じぃぃぃと今にも聞こえてきそうな音に、ペンを握るイルカの手が震える。

「…カカシ先生」
「あ、わかりました?視線に好きって思いを込めていたこと」
「わかりますか!んなものっ!!!」
「じゃあ、やっぱり口で。好きですよイルカ先生」
「貴方の口説き文句はそれだけですか!!」

はっ!と馬鹿にするように叫べば、カカシは目を丸くし黙った。それを良いことにバラエティーが少ないんですねと、止めの言葉を吐いて机に戻る。
しばらくの間は、カリカリとイルカが動かすペンの音だけが響いていた。だが、書類も終わりにさしかかり、イルカの頭も冷えてくると先ほど言った自分の言葉に後悔し始める。

そういえば、最近忙しいばかりでろくに話しもしていなかった。もしかしたら、さっきのはカカシなりの構って欲しいという現れで…なのに自分は…

胸に渦巻く罪悪感。先ほどから何も言わないカカシがどんな顔をしているのか。
おそるおそる顔を上げれば。


「イルカ先生。愛してます」
「っ……!!!」

耳元にそっと告げられた言葉に、イルカの顔は真っ赤に染まる。
くすくすと笑う大切な人は、イルカの思考を読みとっていたように優しい眼差しでイルカを指さす。

「俺の口説き文句もなかなかでしょ?」
「っ…貴方って人はっ!!!」

むっと口を結んでも、赤い顔は一向に収まらず、カカシはずっと笑い転げていた。

口説き文句 (2005.3.31)