こっちへおいで




「イ〜ルカ先生」

アカデミーの廊下を歩いていたら突然カカシが現れた。おいで、おいでと手をひらひらさせて、二人だけの秘密とばかりにイルカを招く。

「どうしたんですか?」

しぃっと口元に指を立てるカカシに、首を傾げながらそっと近づくと。

「あ」

くすくすとカカシが笑い、イルカも苦笑する。何匹もの子犬に囲まれたまま、カカシ率いる七班の子供達が疲れ切った顔で寝ていた。

「今日は確か…」
「ええ。今年生まれた子犬の世話だったんですが、何匹が逃げ出したんですよ。子犬は遊んでもらえると喜んだようですが、こいつらは必死でしたから」

何とか捕まえたものの、疲れ切ってここで一休みしているうちに眠ってしまったらしい。

ナルトらしいな。
大きな口を開けて眠るナルトを見てくすりと笑うと、突然体が後ろに引っ張られた。

「!?」
「…な〜んであいつらばっかり見てるんですか?」
「はぁ?」

しっかりと背後からイルカを抱きしめるカカシは、不機嫌そうに呟く。

「…貴方が呼んだんでしょう?」
「見せようと思っただけです。イルカ先生は俺のところに来ればいいんです」
「はぁ?」

わけがわからん。
ひっつかれたまま、無言で居ればイルカが怒ったと思ったのか、後ろでぼそぼそと何やら言っている。

こっちにおいでは、俺のところにおいでって意味なんです。

「…まったく貴方は」

肩にかかる銀髪を撫でると、少しだけ強く抱きしめられた。
相変わらず甘えっ子ですねぇ。そう言えば、イルカ先生だけですと返ってきた。

こっちへおいで (2004.10.29)