独りぼっち




「ただいま…と、そうだ今日カカシ先生は居ないだっけ」

ついいつもの癖が出たと、頭を叩くイルカは、すっかり居るのが当然となっているなと、苦笑い。
昔の知り合いと飲みに行くと、昨夜聞かされ、素直に送り出したのだが、この寂しさは埋められない。
こんなに部屋は広かったか。
こんなに静かだったか。
こんなんい寂しかったか。
一日でも離れているのが寂しいなんて、恋する乙女でもあるまいしと、イルカは夕食の準備に取りかかる。

ご飯とみそ汁、そしていくつかのおかず。
口にするがあまり美味しくない。何故だろうか?
気付けば視線を上げて、いつも真っ正面に居る相手を捜してしまう。一人での味気ない食事。
不意に浮かんだ言葉は。

独りぽっち。

孤独な少年時代を思いだし、そんな感傷に浸る年でもないだろうとその考えをうち払う。だが、その言葉はぐるぐると頭を回り一向に離れてくれない。
知らずのうちに箸を置き、イルカは深い溜息をついた。もう片づけようそんな後ろ向きな思いでいた時、何よりも求めていた気配が近づいてくるのを感じ取る。

「ただいま…イルカ先生。あ、帰ったばかりなんですか?」
「……ええ。ようやく夕食ですよ。カカシ先生は?」
「ちょっとだけしか口に入れてないんですよ。俺の分もありますか?」
「ええ。じゃ、すぐに用意しますね」

カカシが戻った途端、すべてのものが明るくなってみえた。
自分はこんなにいつもカカシを求めているのかと、そんな真実に顔を赤らめて。

「?イルカ先生?」
「何でもないですよ!」

そう言うのが精一杯のイルカだった。

独りぼっち (2004.9.30)