「何だよ。最近付き合いわるいなぁ。お前」 久しぶりに顔を見せた馴染みの男にそう言われ、カカシは少しだけ肩を竦めた。この男と組むのは悪くないと、任務で希望を求められれば必ず隊に組み込んでいた奴。だが、戦場から離れたカカシと、前戦で戦う男では時折酒を酌み交わすことしかできなくなったが。 「色々とね。忙しいから」 「ふぅん…ああ恋人のせいで?」 「……アンタ昨日帰ってきたばかりだよね」 「噂ってのは早いもんだぜ?それも面白いネタなら、話したくて溜まらない奴がうずうずとしてるだろ」 今日何度カモにされたことか。そう笑う男だったが、噂とともについているおまけは気にしてないらしい。 「色々大変だけどな。ま、ほどほどにがんばれ」 「…アンタに励まされるとはねぇ…」 「お前がそこまで執着するのも珍しいだろ?わざわざ引き離そうとするほど、馬鹿じゃねぇからな」 「…ふぅん。じゃ、やっぱり色々聞いたんだ」 「まぁな」 ことりと箸を置いた男は、静かに笑った。 「あのカカシが中忍の、しかも男を選んだってのは相当以外だったらしいな」 「…人の勝手でしょうが」 「ま〜な、どうせ噂には耳を貸さないお前だ気にしてないんだろうが、相手の方には気をつけるんだな」 「…わかってるよ」 「お前の報復を恐れる奴が殆どだけどな…ま、俺も協力してやるだから…」 「?」 「どんな心境か、ちらっと教えてくれよ」 「心境ってねぇ…」 あまり話したくなさそうなカカシだったが、男の視線にしぶしぶ答える。 「もう一つ、別のものが見えたんだよ」 「別のもの?」 「…一つの世界しか知らなかった俺に、こんな世界もあるんだと教えてくれた人だからな」 闇に包まれて、それしかないのだと思っていた自分に、こっちを見れば全く違いますよと笑ってくれた。見方を変えれば、世界は無限に広がるのだと。 そんな新世界を。 「………もういいぞ」 「?そう?」 男の言葉に素直に従い、口を噤んでしまったカカシだが、男の方がこれ以上聞かなくともわかると溜息をついた。 (…な〜んて顔で話すんだよ、てめぇは) 俺達と居たときとは違う…別の顔。 (取りあえず、暗部連中やってる、その中忍の監視レポートなんぞはとっとと始末しといた方がいいな) 怒られかねないというより、このカカシを変えた中忍の影響力に嵌るかもと男は苦笑いを浮かべた。 新世界 (2004.9.30) |