隣ですうっと目を閉じたカカシ。 その途端、彼は森と同化し、その存在感を消し去ってしまう。すぐ傍にいるのに、その変化はあまりにも唐突で、圧倒的で、イルカは今更ながらに彼の実力を感じてしまった。 (…さすがは上忍) いつも自分にぺったりの彼からは予想のつかない、上忍の彼との距離。これが写輪眼のカカシと呼ばれる忍の本当の姿か。 イルカが瞬きした瞬間。カカシの姿が消えた。 (…え?) 「イルカ先生〜見つけましたよ!」 「うわぁっ!?」 突然背後から現れ、抱きつかれてしまったイルカは身を隠していた枝からバランスを崩し、落下しそうになった。 「どういう登場の仕方をするんですかっ!貴方はっ!!!」 「イルカ先生の背中を見たらつい」 「ついじゃないでしょうっ!!これじゃぁ…修行にもならないじゃないですかっ!」 最近運動不足のイルカは、暇を持て余しているらしいカカシに鍛錬の相手を頼んだのだ。こちらから攻撃する筈だったのに、見事にそれをぶち壊してくれたカカシ。しかもそれに全く気づかない自分が腹立たしい。 「でも…さすが上忍ですね。俺の気配をすぐに見つけるなんて…」 「あ、それは違いますよ?イルカ先生の気配の消し方すごいです。一瞬見逃しそうになりました」 「は?」 何故か褒めているらしいカカシの台詞に、お世辞を言うなと怒り出しそうになったが… 「イルカ先生を見つけるのは俺の野生本能ですから〜!!」 「…わけわかりません」 はぁぁぁと深いため息をついたイルカは、がっくりと肩を落としながら抱きつくカカシをそのままに、ぼうっと空を見上げたのだった。 野生本能 (2004.6.22) |