「わ〜!!でっけぇってばよ!」 うわぁいっと叫びながら、ナルトが風呂へを走っていく。 「こらっ!ナルトっ!体を洗ってからだぞ!!」 「わ…わかったってばよ…イルカ先生」 「ったく本当に落ち着きがないなお前…サスケはちゃんとやっているぞ?」 「ぐ…」 ぶすっと膨れたナルトを促し、イルカも体を洗うために移動する。 (…カカシ先生は…今頃任務なのになぁ) ちょっと罪悪感に見舞われながら。 本当はこの温泉旅行はカカシと二人で行く筈だった。だが、急な任務が入ってしまい、子供達を誘ったのだが、普段出掛けることがない彼らにはとても楽しいものになったようだ。 「サクラちゃんも来れれば良かったのに〜」 食事をつつきながら、ナルトは仕切に残念だと繰り返す。カカシが任務に行くことになって休みになった分、彼女も家族と出掛けることになってしまったのだ。 「そんなにがっかりするな!またいつかいけるさ!それよりもちゃんと野菜も食えよ?」 「わかってるってばよ」 「…残すなよ」 「当たり前だってばよっ!!!」 きーーっと睨みあった二人は、競争するように目の前に食事を平らげていった。 丸い月が昇り、隣の部屋からは規則正しい寝息が聞こえてくる。窓枠に肘をかけ、一人月を見ながら晩酌をするイルカであったが…わびしさが消えることはない。 (今頃…カカシ先生は…) いつからカカシのことばかり考えるようになったのだろう。こんなにも離れているのが…苦しいなんて。寂しいなんて。 きっと大丈夫だと、戻ってくると信じていても、やはり忍という職業がら、絶対という言葉がないことは承知してる。あの人は自分より力のある上忍で、凄腕の忍者だ。きっと戻ってくる。何度も何度もそう言い聞かせ…酒をあおった。 「浴衣姿もいいものですね〜」 「!?カカシ先生っ!?」 まさかと振りかえれば、ここに入るはずのない…銀色の髪が飛び込んできて。 「ただいま帰りました。イルカ先生」 思わず涙がこぼれそうになる。 「…イルカ先生?」 突然しがみついてきたイルカにカカシが驚きの声を上げるが、酒の力も手伝ってか、何かの枷が外れている。 額当てを外し、赤い瞳をのぞき込んで、その目を見つめたまま口元を覆っている布を下ろした。 「……甘い」 「お口に合いませんでしたか?」 「いいえ?イルカ先生の唇だと思うとそれだけで十分甘いですから」 臆面もなくそう言って、今度はカカシからの口づけを受ける。 「続きができないのが残念です」 「………俺もですよ」 くすりと笑い合い、こつんと額を合わせる。そして月の下でもう一度口づけを交わした。 温泉旅行 (2003.5.16) |