ようやく子供達の任務が終わり、カカシはやれやれと見守るだけの疲れを感じつつ、報告書を出すためにアカデミーへと向かっていた。 (…あれ?ナルト?) だがその途中、とっくに解散した筈の子供達を見つけてしまい、カカシは首を傾げる。カカシの受け持っている子供達が、揃いも揃って道ばたにしゃがみ込みごそごそと何かを捜しているのだ。 「何やってるの?お前ら」 「あ!カカシ先生っ!」 「…カカシ先生…じゃないでしょ?ナルト。とっくに帰ったと思ってたのに…」 走り寄ってくるナルトの頭をひとなでして、理由を問うように、サクラを見る。ちなみにサスケは目をそらし、理由を説明する様子はなかった。 「四つ葉のクローバーを捜しているんだってばよ!」 「…四つ葉?」 「この辺りで沢山見つかるって聞いたの。ほら!」 カカシの前に手を広げて見せたサクラ。その手の中には一つの四つ葉が収まっていた。 「これは…すごいね」 「でしょーー!一つ見つかったなら他にもあるかもしれいないじゃない。どうせなら皆の分も見つけたいねって話しになって…カカシ先生も捜して!」 「俺も?」 「そ!だって皆で幸せになりたいじゃない!」 サクラの言った言葉に、カカシは何と子供らしい言い分だろうと幾分冷めた気持ちで思った。しかし夢中で捜している子供達にそう言える筈もなく…カカシは頭をかきながら、仕方がないと参加することに決めた。 (幸せねぇ…そんなもので幸せになるなら皆捜してるよ?) 身も蓋もないことを思いながらも、カカシはクローバーを捜す。だが見つけるのは三枚の葉ばかり。四つの葉などどこにもなかった。 「あったってばよ〜!」 「…俺もだ」 子供達が嬉しそうに叫んでいる。彼らが見つけたなら、付き合うのもこれで終わりかと思ったのだが… 「あと一つ!カカシ先生の分っ!」 「がんばるってばよ!」 「…ちっ…」 そう言って子供達が再び草むらと格闘し出す。そのことにカカシは呆然としていた。そして… 「あったってばよ!!!」 高々と掲げられたナルトの手に、最後の四つ葉のクローバーが握られていた。 「はい!じゃあこれがカカシ先生の分!本の間に挟んで押し花見たいにしてもいいわよ!」 差し出された四つ葉を受け取り、カカシはありがとうと笑った。顔を見合わせ、照れくさそうに笑いながら帰っていく子供達。 (……悪くないね) たかが草一本。葉が一つ多いだけ。だがそんな中にも幸せを見つけようとする彼らが嬉しかった。 (押し花ね) 愛読書を取り出し、その間にぱたんと挟む。こんなところに挟んで!と怒られるかもしれないなと思いながら、カカシはアカデミーへと向かい歩き始めた。 (イルカ先生も喜ぶかな) 実は自分で見つけていたカカシ。だが、あまりに子供達が一生懸命に捜しているので言い出せなかったのだ。これは大切なあの人にあげようと、カカシは軽い足取りでその人がいる場所へと向かって行った。 四葉のクローバー (2003.5.9) |