TVスター




カカシが歩くたびに誰もが一度は振りかえる。
尊敬や憧れの眼差しが男女構わずから注がれ、そんな時いつもイルカは心で溜息をついていた。

(TVスター並だもんな)

里内は勿論のこと、大名や敵の中でも彼の名は有名で、逆に知らなければ信じられないという顔さえされる。知っていなければ罪だとそんな眼差しで。

だから時々不安になる。この人の傍にいて本当に良いのかと。

「イルカ先生?」

だがその度に、この人はそれを察したように声をかけてくる。自分を気遣うような、少し不安げで心配そうな眼差し。

「何でもないですよ。それより今日の夕食何にしましょうか?」

ほっと目を細めて、そうですね…と続けるカカシをそっと見る。名前だけ聞けば決して届きそうにない人だけど、自分の横にいる時は誰よりも大切な人になる。

「今日はカカシ先生の好物にしましょうか」
「?どうしたんですか?いきなり…」
「嫌なんですか?そしてら天ぷらにでも…」
「いえ!!好物で御願いします!!!」

こんな風に笑い会う日々がいつまでも続けばと、ただそれだけを願う。

TVスター (2003.5.9)