「何をしげしげ見ているんですか?」

二人で買い物に出掛けたが、イルカの姿が見えなくなり、店を探し回っていたカカシ。ようやく見つけたと思えば、イルカは関心したように何かを見ていた。

それは大きな皿。

「いいですね」

それは何かの展示会なのか、首を巡らせれば作者の書かれた立て札とともに沢山の皿が飾られている。イルカの見ているのは大皿で、中には月やすすきなど秋の風情が描かれていた。

(…何が?)

イルカが何故関心しているのか、全くわからないカカシは取りあえずじっとその皿を見てみた。だがよくわからない。皿など食事を乗せるものだし、手を離せばすぐに割れてしまうもの。そんな意識しかないというのに。

「この色がいいですよね。焼き物っていう感じで。ここの黒い筋とか。ああ、これはきっと焼くときに入ったんだろうなぁ…」

詳しいのか、一人呟き続けるイルカ。だが焼き物のことなどわからないカカシには全く面白くない。

「…イルカ先生そろそろ…」
「うちにも一つ欲しいよなぁ。こんな大きなものとはいわないけど…和の風情が一つぐらいあっても…そう思いません?カカシ先生」
「………はぁ」

話を振られたが、カカシは曖昧な返事しかできない。というか、別になくてもいいのではと内心思う。

(…そんな綺麗な色でもないし)

横にある真っ白な皿の方が、こんなのよりもいいのではないか。そう言おうとしたが。

「…月が描かれているのこれだけなんですよ」

ぼそりと言ったイルカ。それにカカシの口が閉じられる。

カカシ先生って月のような人ですよね。

昨晩言われた言葉が頭の中に響き渡った。

見ればイルカの耳は少し赤くて、顔も背けている。どうやら結局はカカシに繋げてしまう自分に照れくさくなったようだった。

「…それじゃ、月見酒と行きますか」
「それも悪くないですね」

また一つ楽しみが増えた。

和 (2003.4.30)