「始めのいっ〜ぽ!だるまさんが〜転んだっ!!」 きゃあきゃあと校庭で遊んでいる子供達を見ていたイルカの耳に届いてきた声。イルカも昔は遊んだなぁと、なんとなしに見ていれば、不意に何故かカカシの顔がちらついた。 (…始めの一歩か) カカシとつき合い始めてもう半月。考えてみれば早いものだと、カカシが自分に告白して来た日を思い出す。 それはあまりに突然で突拍子もない言葉。なかなか信じられなくて、上忍にありがちな冗談だと、勝手に怒って避けて。それでも何とか自分の気持ちに素直になって、その関係を受け入れたけど。 (…あの後がなぁ) すぐさま体の関係に持ち込もうとするカカシを叱れば、その日から彼はぴたりとそんなそぶりを見せなくなった。いや…ちらりとはあったかもしれないが、それは前ほどあからさまではなくて、当初はわかってくれたかと一人満足していたけれど、あまりにも…というか何ヶ月たってもその変わらない様子に逆に焦れたのは自分の方だった。 もう飽きたのかなとか、そんな魅力はないのかなとか。 自分から望んだ癖に一人で悩んで、もうどうにもできなくなって。 (…俺ってすごい自分勝手…?) 食事を終えたくつろいだ時間に、カカシの浮かべた優しい笑み。 どうしてもそれに口づけしたくて。 躊躇したのは一瞬。驚いたカカシの顔がまだ目に浮かぶ。 イルカ先生からしてもらえるなんて思っていませんでした。 ぎゅうっと抱きしめられて後はそのまま。 とても照れくさかったけれど、後悔はしていない。それに… (ああしなければ、いつまでもそのままだったし) いつも後込みする自分には珍しい。そして、始めの一歩を踏み出せた自分の気持ちが本物だと改めて確認できたあの日。 「イルカ先生〜」 「おう!どうした?」 「先生も一緒に遊ぼうよ!」 子供達に手を引かれ、イルカはわかったとその子供の頭を撫でる。 「よし!負けないぞ!」 笑い声が響き渡った。 始めの一歩 (2003.4.30) |