『貴方が嫌いでも、俺はずっと好きですから』 カカシにそう言われて、イルカは思わず間抜けな声を出してしまう。 俺が…嫌い?誰がいつそんなことを言ったんだ!? 何かとてつもない誤解が生じている。イルカは自分を見返すカカシを見て、尚更それを確信した。 …じゃあ、俺をずっと避けていたの…って。 そこまで考えて、イルカは脱力する。 イルカ先生?とカカシの声が聞こえて来たが、返事をする気にもなれなかった。 …確かに始めは好きだと言われて驚いた。からかっているのだろうと勝手に決め込み避けていたこともあった。しかし…カカシの思いが本物だとわかったから、自分は少しづつでも理解しようと思っていたのに。 …確かに、友達って位置から踏み出さなかった俺も悪かったよ。だけど… カカシの隣を歩いていたくの一。自分以外の人と和やかに話すカカシは嫌だった。 これが嫉妬なのだと、ようやく気付いて、しかしなかなか言葉にできなくて。 だが、ようやく気付いた。カカシの存在が自分に取って特別になりつつあることを。 だから、さようならと言ったカカシに会いたかった。話を聞き意味を質したかった。彼が自分から離れようとする意味を。 「…カカシ先生」 自分の声が地を這うような低い声であることに驚く。 何でこんな気持ちで言わなきゃいけないんだ。もっと…普通に言うはずだったのに! 自分の声に驚いているカカシ。 ああ…好きに驚けばいいさ!勝手に人の気持ちを決めるなっ!誰がいつ嫌いでいって言ったんだよ! 「俺は」 ふいに先日テレビで見たライオンを思い出す。何だかカカシを睨み付ける自分は、獲物を狩ろうとする気持ちに似ていて。 「貴方のことが好きですよ」 らいおんハート。 勝手な貴方に俺がどれだけ怒っているか。 牙を向ける獣の心を知るがいいさ。 らいおんハート (2004.2.16) |