「は〜い、今日はこれで解散ね」 疲れているはずなのに、まだ元気が有り余っているらしい子供達は、終わった途端元気の良い声を上げた。 「よしゃ!これから修行だったばよ!」 人一番元気なナルトが、ガッツポーズをしつつ隣にいたサクラを誘うが、それはあえなく一蹴。 「サスケく〜ん」 「帰るぞ」 そのサクラもサスケに振られ、子供達は落ちていく夕日の中を帰っていった。 「さてと〜どこで時間潰すかなぁ」 子供達を見送っていたカカシは、この時間に受付所にいるであろう人のことを思い浮かべて、溜息をつく。 イルカを避けて一週間。 本当は毎日彼の顔を見ていたい。彼の声を聞いて、側にいて、いつものように食事をしたい。 最近ずっとイルカと夕飯を共にしていたせいか、一人では寂しいと感じてしまう。 自分が飢えているのだと、他人に大して初めて持った感情。だけど会いになんて行けない。 彼に嫌われている自分では。 「…迷惑だったんだろうなぁ」 はぁぁと深い溜息をついた時。 ヒュッ。 バァン!!! 「…今日はお前とつき合う気しないんだけど」 「なぁにを言うっ!!!我がライバルカカシ!!今日こそ決着の時だっ!!!」 どうしてこう人が落ち込んでいる時に現れるんだろう。 カカシはガイの蹴りを腕で受け止め、すっと体を引いた。ガイはそれが始まりと受け取ったのか、戦闘態勢に入るのだから、カカシは声にならないうめき声を上げる。 「あのね〜人の話聞いてる?」 「行くぞカカシっ!!最近お前には覇気がないっ!その不抜けたお前に活をいれるのだぁぁ!!!」 「いや、入れなくていいから」 「問答無用っ!!!」 びゅっと向かってくるガイにげんなりとしながら、カカシはどうすればこの場から逃げ出せるかと唸り続けた。そんなカカシを知ってか知らずか、ガイの動きはますます激しくなっていく。 「集中しろっ!カカシっ!!」 「あのねぇ〜お前とデスマッチなんてする気分じゃないのよ〜」 「それは、お前がふぬけになっている理由でか?」 ガガガと次々と繰り出される拳。あんなものをまともに受けるなんてとんでもない。 カカシはひょいひょいとそれをかわしながら、ガイの蹴りが来た瞬間木の上に飛び上がった。 ドォン!!! ガイの蹴りが木の幹をぶち抜き、カカシは倒れ行く木の上で深い溜息をついた。 「なら、さっさとイルカに会ってくれば良いだろうが」 え、と目を丸くするカカシは、目の前に来たガイを避けることができず、後ろに吹っ飛ばされた。 「イルカが毎日お前を捜し回っているというのに…そんなに冷たい男だとは思わなかったぞ!我がライバル!!!」 「え…?イルカ…先生が?」 飛ばされた衝撃を殺さず、地面につけた手を軸にして、くるりと体制を立て直したカカシはびしっと指を突きつけているガイを見返す。 「何をしたのかしらんが、さっさと謝って来い!!イルカはいつまでも昔のことを根に持っている奴ではないぞ!!!そして早く元のお前に戻るんだな!」 キラーンと歯を輝かせ、ガイは笑いながら去っていく。 …なんだ…アイツ… まさかわざわざそのために来たのだろうか?なんでアイツが… 様々な疑問が頭を巡るが、それよりもイルカに会えと言われた声が頭の中に木霊している。 謝る?何を? 別に自分は何も悪いことはしていないじゃないか。ただもう迷惑だと思ったから…そう思われていたことにやっと気づいたから会わないのだ。 でも。 「…会いたいなぁ」 会えないのではなく、会わない。 それが何よりも辛いなんて。 「…会いたいな…」 そう言えば、自分はイルカの返事など聞かず彼を避けるようになってしまったが、イルカはどうなのだろう。 優しいけど、嫌なことは嫌だとはっきり告げる人。 もし…自分が嫌いなら、もっと前にそう言ってくれたのではないか? 「元の俺にね…」 ガイの言う通りだ。こんな不抜けた自分なんて自分じゃない。 カカシはくくく…と笑い、すっと顔を上げる。 「玉砕…してみるかな」 ガイの忠告に従って見るか。 カカシは久しぶりにすっきりとした自分に満足しながら、一人の人を求めて姿を消した。 デスマッチ (2003.12.22) |