イルカは料理が好きらしい。 カカシは目の前に置かれている夕飯を食べながらそう思った。 最近、飲みに行く回数が減った代わりにイルカの家で食事を取ることが増えている。味も悪くないし、暖かいので、得に気にせず食べさせてもらっていたが、いつもイルカが嬉しそうに鍋をかき回していたり、フライパンを使っていることに気づいた。 得に、彼はサラダが好きなようで、お手製だというドレッシングをかけて、キュウリやレタスをぱりぱりと食べている。だからつい。 「イルカ先生ってナチュラリズム…?」 「…は?」 「いや…ね、野菜ばっかり食べてるし」 カカシに指摘され、イルカは自分のそばにある料理を眺める。先ほどから、野菜ばかり食べていたことにようやく気づいたらしく、誤魔化すように笑った。 「そんあ…カカシ先生大げさな。ついですよ、つい」 「でも、イルカ先生。サラダ好きですよね。必ずありますから」 まぁと言葉を濁しながらイルカは言った。 「だってもったいないじゃないですか、折角自分の持つ味を持っているのに、調味料とかで消えてしまうの…勿論、それが駄目だとか言っているんじゃないですが、最高の味ってのはやっぱり自然のまま…って変ですかね?」 照れくさそうに笑う彼を見ながら、野に咲く花が綺麗だと言いながら、摘むのがもったいないと、その場所まで人を引っ張っていった彼を。 あれもそういう意味なのだろうか。その花はそこで咲いているのが美しいと。 「…やっぱり貴方はナチュラリズムですよ」 忘れてしまった人としての気持ちを持ち続ける貴方。 だからこそ俺は… 「俺はそんな貴方が好きですよ」 眼を丸くしているイルカに、カカシはそう笑った。 ナチュラリズム (2003.3.31) |