なんだか朝から空気が違う。 首を傾げながらも、取りあえず職員室に向かっていたイルカは、アカデミーの廊下を走ってくる足音に立ち止まった。 あいつら〜 「イルカ先生っ!!」 「こらっ!お前達廊下は走らない!大声を出さない!!」 もうとっくにアカデミーを卒業し、果てには見事下忍にまでなったというのに、ナルトはアカデミー生と同じく荒い足音を立ててやってくる。何時まで経っても…と内心苦笑しつつ、イルカは怒りの表情でやってくるナルトを睨んだ。 「ご…ごめんってばよ」 「ってくお前は〜って何でこんなところに居るんだ?サスケもサクラも。もう任務の時間だろ?任務書は昨日カカシ先生が取りに来たぞ?」 遅刻の常習犯であるカカシに業を煮やし、下忍達が受け取りに来たのかと思ったが、違うってばよ!と飛び上がるナルトと顔を見合わせるサスケとサクラに、イルカは眉を寄せた。 「何かあったのか?」 「あの…実はイルカ先生に御願いがあって来ました」 「御願い?まぁ…聞けることなら聞くが…」 「じゃあ!俺達と組んでくれってばよ!」 「はぁ?」 横から口を出してきたナルトのせいで、ますます訳がわからなくなったイルカに、サクラとサスケから睨まれたナルトは、あははと笑って頭を掻いている。 「先生、近々行われる『究極の隠れんぼ』って知ってますか?」 「…き…『究極の隠れんぼ』?何だそれ?知らないぞ?」 そんなイベントあったか? うううと唸りながら頭を捻るイルカに、サクラは自分達も今朝聞いたばかりだと前置きする。 「下忍対上忍のイベントで、スリーマンセルが参加した場合は上忍師も強制参加。優勝者には火影様よりちょっとしたご褒美が出るらしいんです!」 「へぇ〜そんなのがあるのか」 「俺ってば絶対絶対に参加するってばよ!そしてカカシ先生を一度ぎゃふんと言わせて見せるってばよ!」 「ふん。根性入れ直してやる」 「きゃ〜ステキ!サスケ君!!」 と三者三様の意気込みを聞いたイルカだが、そこに自分がどう関わるのか一向に見えてこない。 「…で?俺が組むとかって…どういうことなんだ?」 「あ!そうだったってばよ!サクラちゃん!」 「あ、うん。それがスリーマンセルの場合、協力者として一人だけ中忍を選ぶことができるんです!それで是非、イルカ先生に御願いしようって…ね!」 「なぁなぁいいだろ!イルカ先生!あ…それとももう誰かと組んじゃってるってばよ!?」 それまでの意気込みが嘘のように、シュンとなったナルトが上目遣いにイルカを見上げた。それはサスケとサクラも同じようで、不安そうにイルカの返答を待っている。 「いや組むも何も…そんなものがあるの初めて知ったしな…ま、俺で良いなら手伝ってやるよ」 「やったってばよ!!」 「…よし」 「やったぁ!!」 大声を上げる三人を慌てて制して、イルカは遅れそうな職員会議に慌てて向かった。 『究極の隠れんぼかぁ…』 何時の間にそんなものができたのだろう。そんな疑問を浮かべながらも、かつての教え子達と一緒に居られる時間を楽しみにしているイルカだった。 「…ってか、何で俺がんなことに巻き込まれるんだ?」 「まぁまぁ、いいじゃないか。どうせ暇だろう」 「暇ってお前なぁ…」 ふわぁと大あくびをしたサイを眺めるのは、不審そうな幾つもの目。寝起きのサイが寝癖をつけたまま、がりがりと頭を掻くと、二人の少女は嫌な顔を見せた。 「ねぇ。ちょっとあの人大丈夫なわけー」 「知らないわよそんなの。でもイルカ先生の友達だって」 「え〜だったらアンタ達があの人と組みなさいよ」 「何言ってるのよ!イルカ先生に御願いしたのは私たちの方が先なんだからね!」 「…」 迷惑気なサスケを挟み、両側から睨む少女二人は胡散臭そうな目つきを隠しもせずサイの方を見ていた。だが、口には出さないものの他の子供達も同じ気持ちなのだろう、シカマルとチョウジも一定の距離以上近づこうとしない。 「他を当たれば?」 「お前がちゃんとすればいい話だろ!ほら、さっさと着替えてこいよ!」 「はいはい」 サイの姿が玄関先から消えると、途端に好奇心旺盛なナルトがイルカへと質問を浴びせかける。 「なぁなぁ!あの人誰だってば!?」 「言ったろう?俺の友達だよ。柊サイって言うんだ。俺と同じ中忍で今臨時のアカデミー教師」 「ふ〜ん」 「見かけはああだけど、結構頼りになる奴だ。何しろカカシ先生やアスマ先生も一目置くんだから、安心しろシカマル」 実はあの後、ナルト達より少し遅れて10班もイベントに参加するべく、イルカへ協力依頼にやって来てしまったのだ。だが、一グループ一中忍と決まっている為、すでに協力者となったイルカは彼らの力にはなれない。他の中忍の知り合いも居ないのだろう、困ってしまった彼らにイルカはサイを紹介したのだった。 「え〜先生本当なの?全然見えませんけど」 「想像つかないよね〜」 イノとチョウジが感想を洩らす中、イルカは苦笑することしかできなかった。横でナルトが俺達イルカ先生で良かった〜と言い、サスケとサクラが頷いていた。 「は〜あ…お待たせっと…」 取りあえずベストを着けてきたサイは、片手には額当て、反対の手に紙を持ちながら出てきた。顔を洗ったようだが、眠気が取れたわけでもないらしく、ぼやっとした表情を隠そうともしない。 「ほい。これ」 「?何だ?」 「『究極の隠れんぼ』に参加する中忍の心得」 「…はぁ!?って何でお前がこんなの持ってるんだ?」 「こないだ配られたんだよ。お前がアカデミーでの研修で居なかった時に。もうこんな時期か〜って話し合ってたんだけどな」 「えっ。じゃあ、お前このイベント知ってたのか?」 何で俺は知らないんだ。ショックを受けたイルカの顔に、サイは肩を竦めてみせる。 「アカデミーの研修って毎年同じ時期だろ。このイベントもそうなんだよ。前は…二年ぐらい前か?その時は『究極の鬼ごっこ』だったらしいけどな」 「…変わるのか」 「詳しくは知らねー俺興味なかったし。まぁ優勝すれば協力した中忍にもおこぼれあるとかで、乗り気な奴が居るのも確かだけど。で、最後の方読めよ」 「ん?」 サイが差した場所を見ると、そこには参加する中忍への注意事項が記されていた。 一つ、協力者はあくまでオブザーバー的立場でいること。指示を出しても良いが、自ら動いてはいけない。 一つ、作戦の中心は下忍が立てること。補足等は最小限に止める。 一つ、グループ同士が組んでも構わないが、それも下忍達の意志で決めること。 などなど、あくまでもこのイベントが下忍と上忍で行われることが記されている。結構細かく決められているんだなとイルカは読み終えたそれを、下忍達にも渡した。 「これっ!!そうすればいいのよ!ね!シカマル!!」 「あ〜だな。さんせー」 「うん」 10班達が一斉に頷き、一文を指さす。グループ同士が組んでも構わないという部分を。 「え〜〜何言ってるのよ!自分達でやればいいじゃないっ!!」 「へ〜それも面白そうだってばよ!」 「げ。何言ってるのよナルト!!(折角サスケ君と一緒に居られるのに!!)」 「ふふ〜ん、じゃあ決まりね!」 睨みあうサクラとイノと、顔を顰め続けているサスケに、ほっとしているシカマルとチョウジ。そして…サイに興味津々のナルト。 「んじゃ!よろしくってばよ!サイ兄ちゃん!!」 満面の笑みでそう呼ばれ、サイは戸惑ったように返事を返す。 「……ああ」 返事を返されたことに満足して、仲間を振り返ってしまったナルトは言葉の間に気付かなかった。それはイルカだけが感じられた、困惑と複雑さ。 遙か昔に失ったもの。 「がんばろうな。サイ」 「…ま〜ほどほどに…な」 何もなかったように大きな欠伸をしたサイは、少しだけ遠い目をしていた。 「イルカ先生〜聞きましたよ。ナルト達の協力者になったんですね〜」 「お疲れさまですカカシ先生。ええ、ナルト達から聞いたんですか?」 受付所に報告書をだしに来たカカシが片目をにこりとさせて頷いた。ぺたんと受理の印を押し、済と書かれた箱に報告書を入れたイルカは、他に待っている人も居ないことを確認して笑った。 「今朝頼まれましてね。こういうイベントあったの知らなかったので驚きました」 「そうだね〜俺も昨日聞いたばかり。イルカ先生と一緒だとナルトがとても張り切ってますよ。お手柔らかに御願いしますね」 「こちらこそ」 ナルト達が参加することで、強制参加になってしまったカカシだが、以外と楽しみにしているらしい。 「でも、詳しいルールって知らないんですが。隠れんぼということなので…上忍の方々が姿を隠すってことですか?」 「ええ、当日カードが配られましてね、そこに書かれているものに変化するらしいんですよ。で、下忍達はそのヒントが書かれている暗号書を解読しながら見つけるようです」 「結構本格的なんですね」 そうですよ〜負けませんから。と笑うカカシに、イルカもこちらこそと返す。 「ん〜じゃあ、イルカ先生個人的に賭けしません?俺が捕まったら一日そのままの姿でおつきあいしますよ〜」 「あははは。何ですかそれ」 「あいつらの楽しむものですが…それだけじゃ先生つまらないでしょ。もし捕まらなかったら、明日イルカ先生の手料理食べさせて下さいね」 「え。そんなものでいいんですか?」 「じゃ、決まりということで!手料理楽しみにしてますね!」 「何言ってるんですか、こちらこそ負けませんよ」 それじゃあと立ち去るカカシの背を見て、ますます楽しみになったイルカだった。 ぱぁんと合図の花火が上がった途端、暗号書の入っている袋の封印が外れる。班に一つづつ配られた袋を早速開け、中身を取りだした子供達は、沢山の暗号書を見て溜息をついた。 「…何が何だかわからないってばよ」 「お前が見てもわかるわけないだろうが、ドベ」 「ちょっとこんなにあるの〜聞いてないわよ〜」 「僕も全然わかんないや」 入っていた量を見て、ウンザリしている子供達を後目に、7班と10班のプレーン的立場にいる二人は、一つの書類を二つに分けた。 「色んなタイプの暗号書が混ざってるな…」 「これとこれは簡単ね…はいサスケ君」 暗号書は、アカデミーレベルから上忍レベルまで様々だ。解くのが容易と思われるものは、サスケ達に任せることにして、サクラとシカマルは難易度が高いものを担当するらしい。 今回の『究極の隠れんぼ』は、変化している上忍達を見つけだす競技。 暗号文を解くと、変化しているものと上忍の名が出てくる。だが、ただ見つければ良いわけではない。上忍達は火影から与えられた点数を持っており、その点数を一番多く得た班が優勝となるのだ。。簡単な暗号文で見つけた上忍は一点、上忍レベルの暗号文は10点というように。簡単なものを解読して点数を稼ぐか、一発逆転を狙うかは班それぞれだろう。 「でもさ、それならグループ同士が組む必要なくないか?」 少し離れた場所でそれを眺めていたサイは、ご機嫌な様子でそれを眺めるイルカに聞いてみた。 「見つけるだけならな。だけど、変化した上忍の方々が、そのままの姿で逃走することが認められているんだ」 「は〜つーことは、見つけて捕獲しないと駄目だってこと〜んじゃ協力ってこともありえるか」 「ああ。しかし、組めば上忍を捕まえる可能性は高くなるが、その分優勝者の取り分も減るからな。どっちがいいのかな」 最初から自分達を当てにすることなく、頭を捻らす子供達。しばらくして、簡単な暗号文の方はサスケ達で解けたらしく、立ち上がった。 「じゃあ行ってくるってばよ!イルカ先生!!」 「お〜がんばれよ!」 明るく手を挙げて消えたナルト達。それを見送ったイルカは、シカマルの手元を覗き込んで、密かにうっと唸った。 …おいおい。こんなレベルも混じってるのか?うわ〜 それはイルカが見ても、一癖も二癖もありそうなしろもの。さすが上忍レベルと喝采を送りたいが、真剣な子供達の前でイルカは口を噤む。サクラの方は持参した用紙に何かを書き込んでおり、順調に解読が進んでいるようだった。 「シカマル。こっちは一つ終わったわよ」 「…あ〜めんどくせぇ」 「何よ!少しはやる気出しなさいよ!」 「つ〜けどよ、これ見て言えるかそれ」 「…何よこれ」 知らないわよこんなの。と顔を引きつらせたサクラに、だろうとシカマルは頷く。 「暗号そのものはさほど難しくねぇよ。でもその後がめんどくせぇ。答えを封じている術を解かなきゃいけねーんだから」 「サスケ君達のは暗号を解けば答えがでてたわよね。ということは…これって一発逆転問題?」 「術系統もわかんねぇ。お手上げだぜ」 もう諦めようとする気配を見せるシカマルに、サクラは食ってかかった。 「ちょっと!諦め早すぎよ!!カカシ先生とアスマ先生の鼻を明かすにはこれ解読しなきゃなんないでしょ!!」 「…サクラ?どういうことだ?それ」 傍観者というより、存在を忘れられていた二人は、彼女の言葉に頭を捻った。確かに彼等の上忍師達は強制参加になっているが、カカシとアスマに配られたカードは何か知らない筈だ。 「実は、始まる前カカシ先生が来て…『俺、Aカード引いちゃったvあ、Aカードってね、一番難しい暗号文のことね。これで、俺の勝ちかな〜ちなみに、アスマも同じ。がんばってね』って言ってきたんですよ!!」 「…なるほどな〜」 カカシ先生。煽るの好きだなぁ。 そんなことを呑気に思っていたイルカだが、はたと気付く。ナルト達がカカシを捕まえられなければ、この前した賭けに負けてしまうことに。別にこちらが負けて手料理を振る舞うことは構わないが… (カカシ先生の変化って興味があるよなぁ) カカシを捕まえることに参加できないイルカは、彼が変化したものを見ることはできない。きっとイベントが終わってしまったら彼は術を解いてしまうだろう…だが、子供達が彼を捕まえれば。 『俺が捕まったら一日そのままの姿でおつきあいしますよ〜』 「…サイ!!」 「あ?」 うつらうつらしていたサイは、突然イルカに襟首を引っ張られ、ぐえっと潰れた声を出した。首が絞まる〜と悲鳴を上げるサイの鼻先に、シカマルが匙を投げた暗号文を差し出す。 「解け」 「…お前ね」 「俺達はオブザーバーなんだぞ!子供達が困ってたらヒントぐらい与えなきゃ、何のための協力者なんだ!!」 力説するイルカをぽかんと見上げて、サイはしぶしぶそれを受け取り目を通す。サクラとシカマルも呆気にとられていたものの、サイがああこれね…と頭を掻いたことに驚いた。 「わかるんですか!?」 「…えっと、サクラちゃんだっけ。そんなに驚かなくてもいいと思うけどな」 「あ、すいません…」 「ま、いいけど。んで、どこまで俺は言えばいいの?」 「言えばって…もしかして解けたんですか?これ」 「うん。術系統はそんなに難しくないよ。ただ複雑に見せてるだけ。長い過程をだらだらとね。何の術かも言った方がいいのか?」 「「御願いします」」 「ほい。これは陰陽術。陰陽術って知ってるよね?」 「私は名前だけ」 「俺は前に読んだことあります。そうか…」 ようやくシカマルの頭がフル回転し始めたようだ。サクラを交えながら、時々サイのヒントを得て、無事術は解読された。そしてそこにナルト達が戻ってくる。 「駄目だったってばよ〜もう捕まえられてた〜ってば!!」 「ちっ…」 「折角わかったのにーー!!」 「残念だったよね」 がっくりと肩を落とした彼等だが、迎えたのはサクラの不適に笑う顔。 「皆っ!Aカードの暗号文解けたわよ!!しかも、カカシ先生とアスマ先生のペア!!」 「ほ…本当だってばよ!?サクラちゃん!!じゃあ…」 「ええっ!皆でこの二人捕まえるわよ!!!」 おーーっと拳を上げた子供達は、一斉に走り出しすぐに見えなくなった。 「捕まえられると思うか?」 「あの子達ならやるさ。ところで、カカシ先生達が変化していたのって何だ?」 サイは答えず、解いた暗号文をイルカへと渡す。そこに書かれていた文字は。 子供。 みそ汁の良い香りが立ちこめ、イルカはお待たせしましたと、席につく。だが、向かえに座っている人物はぶすっとしたまま、答えようとしなかった。 「…酷いです。あいつらにサイ先生も付いていたなんて…」 「あれ。知らなかったんですか?てっきりナルト辺りが自慢してたのかと」 「それがあいつら…組んだことも俺に言わなかったんですよ。忍者は裏の裏もよむべし!なんて生意気な口を…」 「よほどカカシ先生をやりこめたのが嬉しかったんでしょうね。ご機嫌でしたから」 むーと頬を膨らませるカカシ…普通、大の男がそんな顔をしても不気味なだけだが(カカシは覆面をしてるのでわからないし)、今目の前にいるカカシは違う。 「本当に可愛いですね。カカシ先生」 「…賭けなんてするんじゃありませんでしたよ…絶対負けないと思ったのに」 6歳ぐらいの子供に変化したままのカカシは、上目遣いにイルカを睨みぷうっと膨れている。イルカとの賭けに負けた彼は、約束通り今日一日この姿で過ごす羽目になったのだ。子供が好きなイルカはこの結果に大満足で、アカデミー生と同じように接してくるものだから、カカシはどう反応すればいいのかわからない。可愛い可愛いと連発されて、困り果てている状況なのだ。 「でも…アスマ先生も可愛かったですよね」 自分一人では嫌だと、アスマも子供に変化させたまま、イルカとサイの所へ顔を出した二人。アスマもその場にサイが居たとは知らなかったのだろう、彼の顔をぽかんと見上げて、ダッシュで逃げ出した。それを見て、サイが大笑いしていたが… 「当分サイ先生のところに顔出しませんよ。アイツ」 「あ〜からかいまくるでしょうね…サイの奴…」 何時も任務に引っ張り込むアスマに恨み言を募らせている彼である。この機会を利用しない手はないと思っているだろう。 「取りあえず食べましょう。カカシ先生」 「はい…いただきます」 ぺこりと頭を下げて、小さな手が大きな端を一生懸命使って食べる姿は、いつものカカシには見えず。イルカはその日一日笑みを絶やさなかった。 「…イルカ先生…もう戻っていいですか?」 「まだ、今日終わってませんよ」 これじゃあ上忍の面子丸つぶれだ〜 心の中でさめざめと泣くカカシに気遣ずご機嫌のイルカ。 「あ。ここ、ご飯ついてますよ」 カカシの頬についた米粒を取り、ぱくりと自分の口にいれるイルカ。相手がカカシだとわかっているのかいないのか。イルカは、びっくりとしているカカシに気付かない。 「食べたら早く寝ましょうね。今日はお疲れでしょう?」 なでなでと髪を撫でられて、カカシは二の句が告げなくなる。 …ま、いっか。こんなことも。 珍しいイルカを見れたものだと思いつつ、たまにはねと口元に笑みを浮かべたカカシだった。 たまにはね・完(2004.11.19) |